マンション関係判例集(第九歩)

〇横領と理事長責任訴訟

4.■管理組合代表者不法行為の相続人へ損害賠償請求 東京地判 平27年3月13日
概要
①原告(管理組合)が、原告の代表幹事かつ区分所有者であったAが徴収した管理費等を私的に流用したとして、死亡したAの相続人5名(被告ら)に対し損害賠償等を請求した
②収入、支出を推認する等し少なくとも私的な費消額700万円であると推定し、請求を認容した(控訴)

3.■会計が横領して役員の善管注意義務違反 東京高判 平27年10月1日
概要
①会計が着服横領した損害(1億円超)を当時の理事長、会計監査に賠償責任(善管注意義務違反)訴訟
②連帯して約464万円(被害額の1割)を支払うよう命じた
③(自主管理に協力しない組合員にも責任があるとして、9割を過失相殺)
④※1審のH27.3.30東京地判を維持

2.■会計担当理事の横領と理事長の賠償責任 東京地判 平27年3月30日
概要
①管理組合法人の会計担当理事の10年近くに亘る管理費等の着服横領(1億円超)
②管理組合からの理事長、会計監査役員の善管注意義務違反による損害賠償請求
③肯定(過失相殺の法理の類推を認め、責任を損害額の1割に制限した)し、副理事長の注意義務違反は否定した ※H27.10.1東京高判も支持
④※本件は、債務不履行責任を求めるものであることから、不法行為責任における過失相殺規定がないので、「過失相殺法理の類推」と示されているが、(中略)
・・当事者間における損害の衡平な分担の観点に照らした相当性判断(余りに不当な賠償義務が生じないように一定の考慮)による修正の意のみで表現されているものと思われる。(センター通信2016-4-21花房博文教授)

1.■理事長の管理委託費横領損害賠償訴訟 平26年9月5日 東京地判
概要
①原告不動産管理会社が管理組合に管理委託費等の支払いを求めた本訴は容認
②管理組合の当時の理事長らが横領した事件で管理組合に委託契約上の善管注意義務違反があったとして管理組合が債務不履行に基づく損害賠償金を原告不動産管理会社に請求した反訴は棄却した

 

〇理事会による理事長の解任

3.■理事会で理事長職を解任可能 平29年12月18日  最一小判
概要
①理事長が総会でなく理事会で解任(解職)されたことから、その有効性をめぐる訴訟が解任された理事長から提起された
②管理組合の理事長を理事会の決議で解任することはできる

2.■理事会で理事長の解任可能 平28年7月20日 東京高判
概要
①元理事長の解任や新役員選任の集会決議(監事が招集)を有効と判断した
②理事会決議による理事長解任を認めた

1.■理事会による理事長解任有効性訴訟 福岡地裁久留米支判 平28年3月29日
概要
①理事長が総会でなく理事会で解任されたことから、その有効性をめぐる訴訟
②管理組合の理事長を理事会の決議で解任することはできないとした
③→H28.10.4福岡地判も支持し棄却した→
④H29.12.18最高判で「理事会で解任可」と逆転し、高裁に差し戻した

 

〇総会による理事長解任訴訟

3.■理事長解任決議めぐる訴訟 東京高判 平28年7月20日
概要
①監事Aが招集した集会で解任された元理事長が管理組合法人を相手に地位確認を求めていた一審は監事A召集の集会通知を不適切な招集通知と判断して、元理事長解任等決議を無効と判断) 千葉地裁八日市場支判H28年1月20日
②控訴審では元理事長を解任した集会決議(監事Aが招集)を有効と判断した
③その後理事長に就任したAが、理事会決議で解任され現理事長Bが就任したことにつき、理事長は理事の互選で選任される旨の規定を指摘し、Aは理事会決議で解任されBが理事長に就任したことを認めた

2.■同一日に二つの総会と理事長解任訴訟 東京地判 平28年8月10日
概要
①区分所有者(原告X2)が招集請求した総会を、開催時点の理事長である被告Yが議長となって19時に開催した後、管理組合(原告X1)の業務を妨害する書面(19時開催の総会結果報告)を組合員に配布等したとして、損害賠償を請求した
②原告X2が招集して14時に開催した総会で理事長Yが解任され原告X2が理事に選出されたとの原告主張を否定し、理事長Yが招集して19時に開催された総会が適法であると認定した(原告の請求を却下)
③→控訴審のH28.12.26東京高判も支持した

1.■臨時総会で理事長解任したことに対し訴訟 千葉地裁八日市支判平28年1月20日
概要
①監事A(女性)が招集した臨時総会で解任された(その後Aが理事長に就任)元理事長が、管理組合法人を相手に集会決議無効等確認を求めた
②監事Aによる集会通知が、不適正な招集通知として、元理事長解任決議を無効(Aの選任を否定)と判断し、元理事長の代表地位を認めた
③理事会決議で理事長Aが解任され、現理事長Bが就任したが、前理事長Aが管理組合法人を相手に地位確認を求めた訴訟で、理事会決議による理事長解任を認めた
④※平28.7.20東京高判で逆転し、理事長解任を認めた

 

〇理事・監事解任訴訟

8.■監事解任訴訟は不法行為との主張を棄却 東京地判 平27年7月22日
概要

①管理組合の監事を務めた原告(区分所有者でマンション管理士を標榜)が職務を遂行しないとして、被告(区分所有者)から監事を解任する訴訟を請求した
②これに対して虚偽の事実を理由としているとして、被告に対して不法行為に基づく損害賠償請求をしたが棄却された

7.■ワンルームマンション 管理組合法人の理事解任訴訟 東京地判 平27年3月24日
概要
①ワンルームマンションの区分所有者(原告ら)が、管理組合法人の理事(管理会社等の従業員で3名)である被告らに不正な行為等(不正経理等)があるとして、理事からの解任を求めた
②棄却された

6.■監事が招集した総会での理事の解任 平30年9月25日  東京高決
概要
①理事の「罷免」を議題に挙げた臨時総会を監事が招集し、解任を決議したのは監事の権限を逸脱していると解任された理事が地位保全の仮処分を申し立てた
②監事が招集した総会での理事の解任決議を認めた

5.■理事解任訴訟 東京地判 平28年7月25日
概要
①区分所有者の一人(法人)が、管理組合理事2名(被告ら)の解任を求め提訴した
②被告らが訴訟提起前の通常総会にて任期満了によって退任し、現在は理事の地位になく、この請求が訴えの利益を欠く不適法なものとして却下された

4.■一般の理事に対する解任請求 東京地判 平28年4月11日
概要
①ビルの区分所有者(原告)が、区分法3条の団体である管理会(被告Y1)の理事5名(被告Y2~Y6)に不正な行為等があるとして辞任を請求した
②非法人管理団体の役員である管理会の理事を解任することは、区分法が予定するものではなく不適法として却下された
③※マンション関係訴訟257には、「H29.12.18最一小判(理事会での理事長職の解任)の考え方からすれば、区分法49条8項と同じく理事に対する解任請求訴訟が認められるべきである」との記載がある

3.■理事任命無効確認請求事件 東京地判 平28年1月13日
概要
①区分所有者が、管理組合に、H26年7月に開催された定期総会においてAを被告の理事として選任した決議は、管理規約に違反(決議時にAはマンションに居住しておらず)しており無効との確認を求めた
②AはH27年8月に理事を辞任しており、原告の訴えは確認の利益を欠き、不適法として却下された

2.■管理規約無効と理事解任請求訴訟 東京地判 平28年1月19日
概要
①区分所有者らが、管理組合の理事3名(1名は理事長)に 1)管理規約49条1項(組合員は、その所有する専有部分につき各1個の議決権を有する)は公序良俗に反し無効であることの確認、2)被告らを理事に選任する決議は無効であることの確認、3)被告らを管理者や理事から解任すること、を求めた
②いずれも理由がないとして棄却された

1.■理事解任請求の訴えの相手は管理組合でなく理事 平26年2月27日  東京地判
概要
①理事に対する解任請求の訴えの相手は誰か
②理事を被告とする訴えでなければならず、管理組合法人を被告とした場合は却下される

 

〇区分所有者による理事長解任訴訟

5.■コムテック管理組合理事長の法令違反損害賠償請求事件 東京地判 平27年5月26日
概要
①区分所有者である被告会社が、理事長として組合の運営を違法不正に行ったとして損害賠償請求すると共に、代表者Aの管理者解任請求を行った
②いずれも否定された(会社は被告適格を有しないとして却下) ※

 4.■理事長の解任請求事件の弁護士費用負担 東京地判 平27年4月14日
概要
①区分所有者が、被告理事長に対し、区分法25条(管理者の選任及び解任)2項の規定に基づき解任することを求めたが、棄却された
②被告の弁護士費用を管理費から支出することは管理規約に反するとはいえない
③管理規約に添付された総会の「出席通知票等」(理事会が配布した出欠通知票・委任状・議決権行使書)は様式例に過ぎず、異なる様式を用いることが、規約に反するとはいえない
④※本件は、「Aが組合員に虚偽の情報を与えて管理会社の変更を行った」として執拗に訴訟を繰り返しているもの

3.■理事長解任及び不正確認請求事件 東京地判 平27年11月11日
概要
①区分所有者が、管理組合理事長には法25条2項(解任)所定の不正な行為があるとしてその確認を求めたが、確認の利益を欠き不適法として却下された
②管理組合の会計担当理事または理事長等としてした各行為が善管注意義務違反に当たるとして解任を求めたが、棄却された

2.■大森駅前住宅理事長解任の請求事件 東京地判 平27年7月22日
概要
①管理組合の理事長(被告)が、耐震診断調査でなく大規模修繕のみを行う意図で違反行為を行ったとして、組合員2名が行った管理者解任請求した
②理由がないとして棄却された

1.■管理業者と不適当な契約をした理事長の解任訴訟 平26年9月3日 東京地判
概要
①理事長に、不適当な管理業者と契約し、当該事業者の不適当な管理業務を十分な監督をしない等の不正があるとして、区分所有者が区分法25条2項に基づく理事長の管理者としての解任を請求した
②請求を棄却された

以上