アメリカ便り(第三十三歩)

■Today is a gift
あっという間に2023年も12月ですね。実際のところまだ終わっていませんが、皆様にとってはどんな一年でしたでしょうか。

私にとっては今年も相変わらず忙しい一年でした。心を亡くすと書いて忙しいとはこれしかり。普段から仕事以外にプライベートでやりたい事を手元の手帳に忘れないように書き留めておくのですが、今年も実現できずに先延ばしされてしまうものばかりでした。やりたいことリストがいつの間にか数ページになってしまい、これじゃあいかんと思っている次第です。

そんな中、高専時代の同級生と40年ぶりに再会することができました。話題は思い出話から近況まで多岐にわたりましたが、私が半導体メーカー勤務だと知るやいなや、半導体不足だからどんどん生産してくれという話になりました。
「おいおいホントに品不足なのかい?ウチは今年の前半終えたところで既に来年は需要が下がるという話だったよ。」
「ああそうだよ。電源系列の部品はおたくの製品使いたいけどちっとも入ってこないんでやりくりするのが大変なんだ。」
と、こんな感じの話になりました。
工場勤務の私にとっては最終製品の物流事情までわからないので、もどかしさが残りました。調べると、半導体2024年問題という話もあるようですが、要は供給側の価格設定の主導権を過剰供給によって失いたくないということなのかもしれません。実のところはどうなのか、興味深いところです。

さて一方で、不動産業界はいかがでしょうか?日本では、賃貸・分譲物件とともに住居者も高齢化でいろいろと問題も多いと澤さんから伺っています。

これに関してはアメリカも同様である筈です。都市の大小に関わらず古い物件の存続に関しては、デベロッパーが価値を見出す立地条件であれば問題ないでしょうが、旧炭鉱地域など過疎化が進むところではやはりゴーストタウン化しているところもあります。コロラドの山並みをドライブしていて、そのよう地域を見かけたことがあります。そこに住んでいた住人たちはどのような形でその街を去っていったのでしょうか。低所得の高齢者たちもいたでしょう。逆に人々が出ることなく独立採算で成功している町など、日本が参考にできるケースも必ずあるのではないかと思います。
もちろん一概には言えませんが、ひとつ楽観的になれる要素があるとしたら、アメリカでは住んでいる土地に対しての執着が日本人のそれよりも少ない事かもしれません。定年後にフロリダなど暖かいところに移り住む人も多いです。居住地の価格が値下がりしない環境や、増え続ける人口など、経済的にアメリカ人の居住地の流動性を支えている面も日本とは違う点としてあげられるでしょう。

以前、アパートの窓越しから撮影。

日本の人口と言えば、言わずと知れた高齢化・少子化。国土審議会政策部会長期展望委員会のこちらのリンクでは、真剣に今すぐ対応を取らないといけないと思わざるを得ないデータを見ることができます。
https://www.mlit.go.jp/common/000135838.pdf

こちらの資料によると、「日本の総人口は、2004年をピークに、今後100年間で100年前(明治時代後半)の水準に戻っていく。この変化は千年単位でみても類を見ない、極めて急激な減少。」とのこと。国の人口分布は、戦争など余程のことがない限り高い確率で未来を予測することができると言われています。即ち、こうなることは30年も前から分かっていた筈です。10年前、通信大学の授業で人口を増やすにはどうしたらよいかと若者たちとディスカッションしましたが、簡単に考えられるような対策すらも殆どやっていないのではないかと思えるような状況です。異次元の対策でやってきたとしても全く効果が出ていないのでは他人任せにしておくことはできません。これに加えてさらに追い打ちをかけるデータもあります。

X(旧ツイッター)では、#超過死亡で検索すると、洗脳装置と呼ばれている日本のテレビでは全く見ることのできない、毎年の死亡者数がわかりやすいトレンドグラフで出てきます。特に2021年以降の死亡数の急激な増加は、将来の日本の人口を考えたときに見逃さずにはいれません。フランスや北欧など、人口を増やすために実施された対策で見事にV字回復した国もある中、そういった事例を参考に地方自治体が手を取り合って、今すぐにでも行動していかないといけない時期に来ていると。茨城県の田舎に実家がある私ですが、久しぶりに同級生と話しをして、こればかりは、私の手帳のやりたいことリストに追加している場合ではないと、今更ながら実感しています。まずはそうした問題意識を持つことだけでも大切だと。

最後に、アリス・モース・アール(Alice Morse Earle)というアメリカの人が、1902年に著した「Sun Dials and Roses of Yesterday: Garden Delights.」という本の中での言葉を紹介いたします。

The clock is running.
Make the most of today.
Time waits for no man.
Yesterday is history.
Tomorrow is a mystery.
Today is a gift.
That’s why it is called the present.

時は刻々と動いている。
今日を最大限に生きよ。
時は人を待ってはくれない。
昨日はヒストリー。
明日はミステリー。
今日は、贈り物。
だから、今この瞬間を「プレゼント」と言うのだ。

どうぞよいお年を

(米テキサス 谷 景太)