マンションの安全と安心(第5歩)

■オートロックがあれば安心?
オートロックのない中小マンションでは「関係者以外立ち入り禁止」とか「チラシの投入あるいは物売り行為はお断りします」などの看板を置いているところが多いです。
また、共用部で居住者とすれ違う、あるいは新聞配達人や宅配業者をはじめとする見知らぬ部外者とすれ違うときに「こんにちは」などと声掛けすることが習慣になっているマンションも数多くあります。
このような対応がきちんと慣習化されているマンションでは、いわゆる「防犯環境設計」における「領域性」を確保することができ、結果として近所の若者が勝手に敷地内に入る、あるいは侵入盗が下見のために立ち入るなどの行為を防ぐことができます。
しかし現実には、看板や声掛けを受けるぐらいでは無断立ち入りを躊躇しない部外者も存在します。どういう人たちかというと、駐車場内の車やバイクにチラシを置く業者、明確な意思を持って商品やサービスの営業を行う社員、ある程度計画的合理的に不法行為を組み立てることのできる犯罪企図者などです。

現在、ほとんどの中・大型マンションに設けられているオートロックは、入館カードなど居住者であることを証明する仕組みあるいは内部から扉を開錠してもらう仕組みなどによって、上述のような無断入場者を遮断し、居住者が認めた人物だけの立ち入りを可能にするものです。
物理的に存在するドアによって、外側よりも防犯レベルの高い内部空間を作り出すのですから、居住者の安心感も確保することができます。

でも、オートロックがあればマンション内の安全はほんとうに担保されているのでしょうか?
担保されないケースを二つ挙げてみましょう。
一つは「伴連れ」です。マンション内に入る権利を持つ人の後ろに付いて行って、自動ドアが閉まるまで、あるいは電気錠が再施錠されるまでの時間にスッと内部に入る手口のことです。オートロック付近に防犯カメラが設置されていても、マンション管理人が常時監視していない限り、ただ映像を記録しているだけですから「伴連れ」の発生をリアルタイムで把握することはできません。
もう一つは、マンション内部に犯罪企図者が存在する場合です。
オートロックの有無は安全と安心に関係がありません。(防犯設備士 Yahosan)