マンションと法(第二十六歩)

■総会の開催準備

前回に引き続き、総会に関する問題を取り上げます。標準管理規約42条3項では、通常総会は、毎年1回新会計年度開始以後2か月以内に招集しなければならないと規定されています。そのため、マンションの会計年度の定めにもよりますが、毎年5月、6月頃が総会開催時期となっているマンションが多いのではないかと思います。
総会は、管理組合における最高意思決定機関であるからこそ、マンション管理に関する重要問題が扱われることになります。そして、総会で決議された事項については、区分所有者のみならず占有者や特定承継人(区分所有権を売買等で取得した者等)にもその効力が及びます。また、当該決議に賛成した者だけではなく、反対した者もその決議に拘束されることになります。
このように総会で決議された事項は、区分所有者等のマンションの居住者に多大な影響を与えますので、総会では、区分所有者の意思が適切に反映されるように、その準備を行うことが重要となります。
毎年の総会では、前期の業務執行報告及び会計(決算)報告に加え、当期の予算及び事業計画並びに役員選任の審議が行われることが一般的です。また、必要に応じて、その時々の管理組合の業務に関する重要事項の審議が行われることもあります。
そして、総会に提出する議案は、理事会において決議する必要がありますので、総会の招集通知の発送時期から逆算をして、いつまでに、何をしなければならないのかというスケジュールを管理する必要があります。
このスケジュール管理においては、何を決議するかという議案内容の吟味にとどまらず、いつ、どこで総会を開催するのかという総会の開催時期の決定や開催場所の選定に加え、議案書等に何を記載するのかという点も含まれます。また、昨今は、WEB会議システム等を用いて会議を開催するマンションも増えてきましたので、この場合には開催方法を検討する必要もあります。
さらに、規約の制定若しくは変更、又は敷地及び共用部分等の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの等を除く。)といった特別決議が必要とされる事項が議案の内容となる場合等には、その内容に応じて、アンケートや説明会を開催すること等により、区分所有者の意見を事前に聴取することを検討すべき場合があるかもしれません。
どのような総会準備を行うのかという点については、各々のマンションの実情を踏まえた個別具体的な検討が必要となりますが、マンションの総会が管理組合における最高意思決定機関であることに鑑みると、区分所有者が議案の賛否を判断するためにはどのような情報を提供すべきかという視点からの検討が重要になるといえます。
そして、総会の招集手続に瑕疵があった場合には、当該総会の決議の有効性にも影響を及ぼし得ることとなるため、その準備は法律や規約の定めに則り、かつ、事前に定めたスケジュールに従い、慎重かつ迅速に行う必要があります。
今回は、総会の開催準備の流れを見てきましたが、次回は、総会における法的問題を見ていく予定です。

(弁護士 豊田 秀一)