マンションと法(第三十七歩)

■管理計画認定制度のあり方についてのとりまとめ(案)
令和6年3月26日に第6回「標準管理規約の見直し及び管理計画認定制度のあり方に関するワーキンググループ」が開催され、管理計画認定制度のあり方についてのとりまとめ(案)が公表されました。
このとりまとめ(案)では、①管理計画認定制度の更なる普及・促進に向けて、②管理計画認定基準の見直しのあり方、③管理計画認定制度の今後の方向性という3つの視点から、管理計画認定制度のあり方について論じられています。
まず、「①管理計画認定制度の更なる普及・促進に向けて」では、管理計画認定制度の現状について、マンションストックベースで国内の9割超のマンションが認定制度の対象となる見込みであるものの、地域によって認定実績の偏在が見られ、また、多くの地方公共団体では、ホームページでの広報のみの取組に留まっており、結果として制度の認知が十分ではないという調査結果が示されています。また、認定を取得した際のインセンティブに対する要望と現状との乖離が存在することや、申請手続における煩雑さなど運用面での課題が存在することについても言及されています。
その上で、今後の方針として、制度の更なる周知等に係る取組への支援措置についての検討を行うことで制度自体の認知の向上を図り、認定を取得したマンションに対する評価が向上するよう関係企業等への協力を呼び掛けるとともに、今後、認定の期限を迎えていくマンションに対しても、継続して認定更新の取組を促し、申請手続やその審査の合理化を図るための支援措置について検討することが打ち出されています。
次に、「②管理計画認定基準の見直しのあり方」では、修繕積立金の安定的な確保について、いわゆる段階増額積立方式における適切な引上げ計画の考え方が具体的な数値として示されました(段階増額積立方式における月あたりの徴収金額は、均等積立方式とした場合の月あたりの金額を基準額とした場合、計画の初期額は基準額の0.6倍以上、計画の最終額は基準額の1.1倍以内とするという考え方)。マンションの長寿命化を図っていくためには、適時適切に大規模修繕工事を行っていくことが重要であるところ、平成30年度マンション総合調査では、3分の1以上の管理組合において、大規模修繕工事を行うための原資となる修繕積立金が不足していると回答している状況を踏まえ、修繕積立金の安定的な確保を図るための考え方が示されました。なお、「基準」という表現を用いることによる弊害を回避するため、「考え方」という表現が用いられています。また、マンションの防災対策の推進について、管理計画認定制度において基準化を図るまでの当面の間、平時から管理組合や区分所有者において取組を進めるべき防災対策として、防災マニュアルの作成・周知、防災訓練の実施、防災情報の収集・周知、防災用名簿の作成、防災物資等の備蓄、防災組織の結成の取組の推進に向けた周知や、地方公共団体が行うこれらの対策の推進に係る取組への支援措置についての検討を行うこととされています。
最後に、「③管理計画認定制度の今後の方向性」では、新築マンションの管理水準の確保、地方公共団体による管理情報の把握、管理に関する情報の見える化という観点からの現状や課題を踏まえて、次のような指針が示されています。すなわち、マンションの管理の適切な管理を担保するため、新築分譲時点から適切な管理体制を確保していく方策や、その体制や管理運営開始後の管理水準を将来にわたって継続して維持・向上していく方策について、現行の既存マンションを対象とした管理計画認定制度との関係を踏まえつつ、マンション管理適正化法のあり方の検討を進める。また、管理計画認定制度は、地方公共団体がマンションの管理状況等を的確に把握し、地域における良好な居住環境の確保に向けた背策を講じるために重要な制度であり、管理組合は、積極的に協力していくことが望ましい旨の周知を行う。さらに、マンションの内外に情報発信する方策について、マンション管理適正化法のあり方の検討を進めるとともに、令和6年度中に、不動産ポータルサイトへの認定情報の掲載に向けた検討を進めるという指針が示されています。
このように、今回のとりまとめ(案)では、管理計画認定制度が管理組合や区分所有者等の管理意識の向上やマンションの資産価値の向上に資する効果があるのみならず、個々の管理組合からの申請等を通じて、地方公共団体がマンションの管理状況等を的確に把握し、地域における良好な居住環境の確保に向けた施策を講じるために重要な制度であると位置付け、当該制度が軌道に乗せるための分析や今後の方針が示されています。
この制度を今後のマンション管理におけるバックボーンとしていくためには、当該制度自体の周知を図るとともに、認定を取得した際のインセンティブの充実を図ることがまずは重要ではないかと考えています。

(弁護士 豊田 秀一)