マンション関係判例集(第十八歩)

区分所有者から管理組合への訴訟 /////////////////

11.区分所有者の対役員訴訟の原告適格 福岡地判 平27年9月4日
概要
①裁判の和解で1階店舗の区分所有者に支払った解決金が管理組合の損失に当たるとして、他の損害賠償請求)
②原告適格がなく不適法として却下された(区分所有者全員を代表して請求権を行使する権限が必要である)

10.特別決議反対者からの慰謝料請求訴訟 東京地判 平27年8月10日
概要
①電気料金削減を目的に個別契約から一括受電契約に変更する旨総会で特別決議が成立した196世帯のマンションで、導入手続き(全居住者の同意と申込書の提出)に反対する1名の居住者が、理事長から執拗かつ威圧的に強要されるなど精神的苦痛を被ったとして慰謝料(約50万円)の支払いを請求した
②不法行為は成立しないとして棄却された

9.マンション占有部分にペットクリニック開業不承認は妥当 東京地判平27年3月4日
概要
①原告が、マンションの専用部分にペットクリニックを開業不承認に対して提訴
②賃借権を有さず、駐車場等の問題もあったことから管理組合が使用を不承認としたことが妥当と損害賠償請求を否定した

8.マンション内の駐車場(ピロティ―)の帰属 東京地判 平26年10月28日
概要
①101号室を所有する原告が、1階の隣接する建物部分(被告である管理組合が駐車場として訴外会社に賃貸中)は原告の専有部分であるとの主張(建物の明渡し請求等)
②構造上の独立性、利用上の独立性を否定し、専有部分でなく、法定共用部分(ピロティ兼通路)であるとして請求を棄却した

7.専用使用部分(窓ガラス等)の工事費用負担 平21年12月24日  仙台高判
概要
①専用使用部分の窓ガラス、戸車等の経年劣化は専用使用者の通常使用に伴うものであり、特別な取扱いをする旨の総会決議がないことから、工事費用は個々の区分所有者が負担すべきである

6.バルコニーの手すり壁ガラス汚れ掃除訴訟 東京地判 平27年7月17日
概要
①マンションの共用部分で区分所有者が専用使用権を有するバルコニーに設置された手すり壁のガラスに汚れがあると管理組合の修補掃除請求
②管理組合が、共用部分に存在する不具合の全てにつき、程度等にかかわらず修補をする義務があるとはいえない→原告の損害発生に被告の過失がない)
③控訴審のH27.11.11東京高判でも維持し棄却

5.区分所有者による管理会社と管理組合への訴訟 東京地判 平28年3月24日
概要
①区分所有者が、管理会社と管理組合を被告として、善管注意義務違反を主張してそれぞれ損害賠償を請求した
②いずれも棄却された(※本件訴えが、原告に訴訟追行権が存在していないことを理由に不適法であるとの被告ら主張は認めず)

4.大規模修繕工事でも雨漏りしたと訴訟 東京地判 平27年11月24日
概要
①原告の妻が所有しC(占有者)が居住している701号室が、被告ら(マンション管理会社、管理組合及び大規模修繕工事施工会社)の過失により専有部分に雨漏りが生じたとして、債務不履行に基づく損害賠償を求めた
②記録的大雪による漏水である他補修工事も速やかに対応している等被告らがなすべき義務を怠っているといえないとして棄却した

3.管理組合関係書類の帰属訴訟 東京地判 平27年10月1日
概要
①元区分所有者が所有または占有していた管理組合に関する書類を元理事長や顧問のマンション管理士等に奪われたとして、慰謝料の支払いや書類の返却を求めた
②資料は管理組合のものであり理由がないとして棄却された
③元区分所有者が、管理組合から駐車場や駐輪場の使用申込みを拒絶されたとして損害賠償を請求したが、管理組合に不法行為は見当たらないとして棄却された

2.商業ビルの専有部分登記をめぐる訴訟 東京地判 平27年10月15日
概要
①1棟の商業ビルの一部店舗や事務所の持分を有する原告が、事務所店舗体育館、多目的ホール、管理室、事務所等を所有する被告に対し、それらが共用部分であるにも拘らず被告の専有部分として登記されているとして、共有持分権に基づき、抹消登記手続や更正登記手続きを求めた
②専有部分か共用部分かを判断のうえ一部認容し、一部棄却した

1.イベント経費支給の有無をめぐる訴訟 東京地判 平27年4月15日
概要
①マンション敷地内で開催されたイベントに関する経費20万円をめぐり
②管理組合から原告(区分所有者)は受領しておらず返還債務はないとの主張に対し渡した、渡されていないとのいずれの事実も認定するに至らないことから、返還債務はないとした
③その他の名誉毀損回復のための謝罪文掲示等については棄却した

 

■区分所有者間の訴訟 /////////////////

1.隣人がバルコニーと廊下に置いた動産の撤去訴訟 東京地判 平26年12月9日
概要
①区分所有者(原告)が、バルコニー及び開放廊下に動産を置いた隣人(被告)に、撤去等と不法行為(予定の賃貸借契約が締結できず、賃料を得られなかった)に基づく損額賠償を求めた
②損害金の請求は棄却されたが、動産の撤去と今後置かないことについては認容

 

■区分所有者と業者の訴訟 /////////////////

2.被告から暴力団付き合い持出され恫喝受けたと訴訟 東京地判 平27年8月6日
概要
①漏水工事を断った区分所有者(被告)から暴力団との付き合いを持ち出され恫喝や脅迫等を受けたとして、工事会社の社長等(原告ら)が慰謝料等を請求した
②原告主張は理由がないとして棄却された

1.居住者による管理会社の使用者責任訴訟 東京地判 平27年3月26日
概要
①マンション居住者が、被告の被用者(管理員指導役)から暴行を受け肉体的・精神的苦痛を受けたとして、使用者責任に基づき慰謝料等請求した
②原告の言動が供述内容と矛盾するとして棄却された

 

■管理組合関係訴訟 その他 /////////////////

10.ビルの駐車場(共用部分)土地に建築建物明渡し訴訟 東京地判 平28年5月19日
概要
①1~4の区分所有権(専有部分)が存在するビルの全ての区分所有権を所有する原告が、ビルの駐車場(共用部分)であった土地に建築した建物を占有している被告に対し請求した、建物の明渡しと不法行為(不法占拠)を理由とする損害賠償訴訟
②認容した

9.分譲会社に対する瑕疵担保訴訟と原告適格 東京地判 平28年7月29日
概要
①管理組合理事長が、分譲会社等(被告ら)に対し、被告らが外壁に瑕疵(タイルの浮きや剥落等)ある建物を販売したとして、不法行為、瑕疵担保責任等に基づく損害賠償を請求した
②一部の転得者(買主が転売)は買主(当初の区分所有者)から被告に対する請求権を譲り受けていないことから、原告は、区分所有者全員が請求権を有することを前提とする授権決議(区分法26条4項)を得ていないとして、原告適格を否定し、請求を却下した

8.管理組合とその債権者との訴訟 東京地判 平28年3月14日
概要
①債権者の申立てにより預金債券等について債権差押命令を別訴で受けた管理組合が、その取消しと債権者に取り立て金員の返還等を求めた
②原判決は、本件債権差押命令に係る債権執行事件は債権者が取り立てたことにより完了し、訴えの利益を失ったとして却下した
③債権者が控訴した
④訴えの利益の消滅については原審を支持したが、金員の返還請求については、東京簡裁に差し戻した

7.全体管理組合が一部管理組合に全体管理費の支払い請求 大阪高判 平28年1月27日
概要
①全体管理組合の管理者「新長田まちづくり」が一部管理組合の店舗部会に全体管理費の支払いを求めた控訴審
②全体管理費は総会で決議されていないとして、神戸地判を取り消し管理者側が敗訴した

6.総会決議なき建物調査診断業務委託の有効性 東京地判 平27年7月8日
概要
①管理組合の理事長から、建物調査診断業務等を総会決議なく受託した会社等(原告)が、業務を行っていたところ、管理組合(被告)が開催した臨時総会で本件契約を白紙に戻す決議がされたことから、管理組合に対し、受託業務は完了したとして報酬等の支払いを求めた
②理事長が集会の決議なく締結した建物診断等の委託契約は、共用部分の「保存」でなく「管理」(区分法18条1項)に当たり、管理者の権限外の行為であるとし、その効力が否定され請求が棄却された。(民法110条(権限踰越の表見代理)と一般法人法77条(一般社団法人の代表)の適用を否定)
③→控訴審(H27.11.26東京高判)でも支持し棄却

5.敷地の一画にある建物収去土地明渡請求事件 東京地判 平27年3月20日
概要
①マンションの敷地にあたる土地の一画に被告会社が建物その他の施設を設置していることに対し、管理組合が土地所有権に基づき建物等の撤去・土地の明け渡し及び賃貸料相当額の金銭を請求した
②当該土地の経緯から被告会社がその使用につき権原を有するものと認定し、組合の請求を棄却した

4.管理規約違反に基づく組合費返還請求 東京地判 平27年9月29日
概要
①区分所有者が、管理組合に、定期総会でされた組合費徴収決議が無効であるとの確認を求めるとともに、同決議で徴収された組合費2000円等の返還を求めた
②いずれも棄却された

3.訴外分譲事業者への図面交付請求訴訟 東京地判 平26年10月6日
概要
①訴外建物分譲事業者に代位して、管理組合(原告)が建物竣工図ほかの書面を建物の建築請負人(業者)に交付請求した
②すでに、分譲事業者に引渡しが終わっているとして請求を棄却した

2.権利能力なき社団に移転登記請求の当事者適格 最一小判 平26年2月27日
概要
①権利能力なき社団に、構成員全員に総有的に帰属する不動産について、移転登記請求の当事者適格を認めた事例
②権利能力なき社団が当事者となって行った判決の効力について、「判決の効力は、構成員全員に及ぶものと解される」と明言 民集68-2-192

1.預金通帳名義変更等請求控訴事件 平26年8月27日 東京地判
概要
①権利能力なき社団である自治会が、自ら代表者と称する前会長を相手どって、現会長が別の人であることを求める確認訴訟
②当事者適格、確認の利益があるとして適法とされた

以上