マンションと法(第十九歩)

■管理組合の運営において、なぜ監事が必要なのか

ここ数回は、当初想定していたテーマからは脱線して、「2つの老い」に関するテーマを扱ってきましたが、今回からは話を戻して、管理組合の運営に関する問題を見ていきたいと思います。

認定基準の中には「監事が選任されていること」が挙げられていますので、今回は、管理組合の運営において、なぜ監事が必要なのかという点を見ていきたいと思います。

まず初めに、監事とは一体何かという点ですが、関係する標準管理規約(単棟型)の規定を確認してみます。35条1項では、監事は他の理事と同様、管理組合の「役員」と規定されています。また、その任務については、41条1項において、「監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査し、その結果を総会に報告しなければならない」と規定されています。

これらの条文を踏まえると、監事は、管理組合の「役員」として、「管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査する」者と位置付けられます。

他方、51条2項2号では、理事会の職務の一つとして「理事の職務の執行の監督」が挙げられています。そうすると、理事会は、管理組合の業務執行の決定だけではなく、業務執行の監視・監督機関とも位置付けられますので、監事の業務のうちの「管理組合の業務の執行…の監査」は、理事会の機能と重複するのではないかという疑問が生じます。

この点については、監事は、「理事会から独立した立場」で、管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査する者ですので、理事会や理事とは立場が異なり、これらの者では代替できない役割を担っていると考えることができます。

このように、監事の職務を考えるに当たっては、「理事会から独立した立場」という点が重要となってきます。

監事が理事又は理事会から独立した立場であることが確認できる規定は、標準管理規約の中にはいくつもあります。これらの条文は、普段見慣れた条文ではあるものの、監事の独立性を示す条文という観点からは意識して確認する機会は多くないと思いますので、この機会に拾い上げてみたいと思います。

まず、35条2項の「理事及び監事は、総会の決議によって、組合員のうちから選任し、又は解任する」という規定では、理事と監事を別々に選任又は解任するとされており、両者の立場が異なることの現れといえます。

次に、41条4項において、「監事は、理事会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない」と規定されている一方で、51条1項で「理事会は、理事をもって構成する」、53条1項で「理事会の会議…は、理事の半数以上が出席しなければ開くことができず、その議事には出席理事の過半数で決する」と規定されています。これらの規定を対照すると、監事は、管理組合の業務執行等の監査のため、理事会に出席をしなければならないものの、理事会の構成員はあくまでも理事であり、その定足数や決議は理事のみが関係するという点で、理事と監事の立場が異なることが表れているといえます。

このように、標準管理規約の条文からも、監事の理事又は理事会から独立した立場を感じ取っていただけるかと思います。

監事の権限や機能については、平成28年の標準管理規約の改正において、監事の権限や機能強化を図るための条文が盛り込まれました。次回は、これらの規定を確認するとともに、管理組帯の運営において期待される具体的な監事の役割について見ていきたいと思います。(弁護士 豊田 秀一)