マンションと法(第十五歩)

■管理組合の運営に関係する法的問題

今回からは、①管理組合の運営に関係する法的問題を見ていきます。管理計画認定基準の①管理組合の運営に関する基準では、管理者等が定められていること、監事が選任されていること、集会が年1回以上開催されていることの3つの項目が規定されています。
総会は、マンションにおける最高意思決定機関であり、マンション管理の基本事項や重要事項は総会で決議されることになります。この意味で、総会が年1回以上開催されているという項目は、マンション管理が適正に行われるために必須の項目と考えられます。なお、「総会」と「集会」という2つの用語が出てきましたが、両者は特段異なる意味があるわけではなく、区分所有法では「集会」、標準管理規約では「総会」という用語が用いられています。
残りの2つの項目についても、マンション管理が区分所有者全員で構成される団体である管理組合によって行われ、その業務の執行が管理組合の役員で構成される理事会を中心として行われていることからも、当然の項目と考えられます。なお、本連載では、標準管理規約が採用する理事会方式(理事長を区分所有法に定める管理者とし、複数の理事から構成される理事会を業務執行の具体的意思決定機関とする方式)を前提としています。
ここで、役員の話が出てきましたので、私が日頃マンション管理に関わる中で皆様に注意していただきたいこととして、「役員」の選任・解任と、「役職」の選任・解任の違いを取り上げたいと思います。
標準管理規約では、「役員」とは理事及び監事のことをいい、「役職」とは理事が就く具体的な役職(理事長、副理事長及び会計担当理事)のことをいいます。そして、「役員」の選任・解任は総会の決議によって行われ(標準管理規約35条2項)、「役職」の選任・解任は理事会の決議によって行われます(同35条3項)。
だからこそ、総会で選任された理事等が、総会終了後すぐに第1回理事会を開催し、その中で理事長等の具体的な役職について決議するという運用を採用している管理組合も存在します。
しかし、「役員」と「役職」の違いを明確に意識されていないことが原因だと思いますが、総会で「役員」を選任するのみで、その後の理事会において「役職」の選任の決議が行われていない(少なくとも明示的には行われていない)ケースに遭遇することがありますので、ご注意いただきたいと思います。
なお、「役員」と「役職」の違いを理解するためには、総会で選任された理事の互選により選任された理事長を、理事会が解任することができるか否かが問題となった事例(最判平成29年12月18日)が参考になりますので、ぜひご一読ください。この事例における最高裁の判断を受けて、令和3年の標準管理規約の改正では、35条3項において、役職の選任のみならず解任についても理事会の決議によって行う旨が明記されることにもなりました。

次回も、役員に関する法律問題を検討したいと思います。

(弁護士 豊田 秀一)