マンションと法(第三十三歩)

■最近のマンションに関する動き(その2)
今回は、マンション標準管理委託契約書の改訂について、その具体的な改訂内容を取り上げます。

<書面の電子化及びIT総会・理事会等DXへの対応>
この改訂は、令和3年施行のマンション管理適正化法の改正や令和3年の標準管理規約の改正内容を盛り込んだものとなります。
管理組合と管理業者の双方における効率性、利便性の向上を図るという観点から、管理業務主任者が行う管理事務報告における書面の電磁的交付やITの活用、WEB会議システム等を利用した総会や理事会の開催における支援業務の内容が追加されました。

<担い手確保・働き方改革に関する対応(カスタマーハラスメント、管理員・清掃員の休暇取得等>
まず、管理員・清掃員の計画的な休暇や、忌引き、病気、災害、事故等によるやむを得ない事由により勤務ができない場合の休暇等についての対応が明記しました。
次に、管理業者に対するカスタマーハラスメントを未然に防止するため、各種規定が設けられました。具体的には、管理組合の指示者と管理業者の指示の受け手を明らかにすることが定められたことに加え、コメント第12条関係では、カスタマーハラスメントが例示される(次の下線を付した部分)など、管理組合及び管理会社の双方がマンションにおけるカスタマーハラスメントに厳に対応していく姿勢が盛り込まれました。特に、コメント第12条関係部分は今後のマンション管理における重要な指針になるものと考えられますので、一部引用します(なお、①から⑥までの番号は執筆者が記載したものです。)。
「いわゆるカスタマーハラスメントは、『顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの』と定義されており(「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(厚生労働省))、これは第1項第4号の「管理事務の適正な遂行に著しく有害な行為」に該当し、組合員等が、①管理業者の使用人等に対し、本契約に定めのない行為や法令、管理規約、使用細則又は総会決議等(以下「法令等」という。)に違反する行為を強要すること、②侮辱や人格を否定する発言をすること、③文書の掲示や投函、インターネットへの投稿等による誹謗中傷を行うこと、④執拗なつきまといや長時間の拘束を行うこと、⑤執拗な架電、文書等による連絡を行うこと、⑥緊急でないにもかかわらず休日や深夜に呼び出しを行うことなどが含まれる。」

<マンション管理業の事業環境の変化(居住者の高齢化、感染症のまん延等)への対応>
マンション管理の在り方に大きな影響を与えた新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた対応となります。
具体的には、コメント第13条関係に説明がありますので、一部引用します。
「新型コロナウイルス感染症の流行により組合員等の共同生活に重大な影響を及ぼす事態が生じたことを踏まえ、今後、管理業者が、管理事務の実施に際し、 マンション内で初めて、健康の維持に重大な影響を及ぼすとされる新たな感染症への 罹患の事実を知った場合にも、協議の上で、相手方に通知しなければならない内容とすることが考えられる。この場合には、行政からの指示や情報を踏まえて対応することが望ましい。また、管理事務の実施に際し、組合員等にひとり歩き等の認知症の兆候がみられ、組合員等の共同生活や管理事務の適正な遂行に影響を及ぼすおそれがあると認められる場合にも、協議の上で、相手方に通知しなければならない内容とすることが考えられる。」

以上が、今回のマンション標準管理委託契約書の改訂の概要となります。本文中にも記載をしましたが、管理業者に対するカスタマーハラスメントを未然に防止する観点から盛り込まれた各種規定は、特に管理業者側からの要請に取り、今後の管理委託契約書の締結時に盛り込まれることが想定される事項ですので、管理組合においてはどのような体制を構築するのかについて、事前に管理業者との調整が必要になると考えられます。(弁護士 豊田 秀一)