マンションと法(第二十七歩)

■総会決議の瑕疵

今回からは、総会に関する法的問題について扱います。繰り返しとなりますが、総会は、管理組合における最高意思決定機関であるからこそ、マンション管理に関する重要問題が扱われることになります。したがって、総会の決議に瑕疵があった場合には、当該決議は無効になると解されています。なお、「総会の決議の無効」と似た概念として、「総会の決議の不存在」があります。総会の決議の無効が、総会の決議は存在したものの、当該決議に瑕疵があったために無効となるのに対し、総会の決議の不存在とは、総会の決議自体が存在しなかったことを指します。例えば、総会の決議が不存在の場合としては、招集権者でない者が総会を招集したような場合であって、その瑕疵の程度が著しく重大な場合には、そもそも有効な総会が開催されていないものとして、総会の決議自体が存在しなかったこととして扱われることになります。
区分所有法には、どのような場合に総会の決議が無効となるのかについて具体的な定めがありません。この点について、ある裁判例では、「管理組合の集会決議について、区分所有法は決議の無効事由を定めておらず、決議に瑕疵があれば、原則として無効となると解すべきである。しかし、集会決議が無効になれば、管理組合内部のみならず、第三者に対する関係においても影響を及ぼすことに鑑み、決議の瑕疵が重大でなく、かつ、その瑕疵があったことが決議の結果に影響を及ぼさないことが明らかである場合には、当該瑕疵による決議の無効の主張はできないものと解すべきである」という判断を示しています。
総会の決議の瑕疵の内容は、「手続的」な瑕疵と「内容的」な瑕疵に分けられます。手続的な瑕疵の場合には、その瑕疵の程度が重大ではなく、かつ、その瑕疵があったことが決議の結果に影響を及ぼさない場合には、無効とまではならない可能性がありますが、内容的な瑕疵の場合には、一般的にその瑕疵が重大といえますので、無効になるという判断に傾きやすいといえます。例えば、規約の変更等が一部の区分所有者に「特別の影響」を及ぼすとき(区分所有法31条1項)において、当該区分所有者の承諾を得ていない場合には、特段の事情がない限り、当該総会の決議は無効になると考えられます。
そして、総会の決議が無効になると、上記裁判例が指摘するとおり、管理組合内部の問題にとどまらず、第三者を含む対外的な関係においても影響を及ぼすことになりますので、管理組合は注意が必要です。
今回は、総会決議に瑕疵があった場合において、法的にはどのように扱われるのかについてまとめました。次回は、決議の瑕疵の具体的な内容について検討したいと考えています。(弁護士 豊田 秀一)